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【北川フラム】奥能登美術考② 9月3日 ―三崎、直地区―

レポート 2017.09.10
【北川フラム】奥能登美術考② 9月3日 ―三崎、直地区―

 芸術祭前日のツアーは3台出て、私はそのうち里山空港出発の中国語圏客のガイドです(もちろん日本人も半分ほど)。お昼はさわひらきさんのお父さんが管理している木の浦ヴィレッジでお弁当。
 この澤信俊さんはかつて大学で教えており、今はこの地に溶け込んでいます。ロビーの本棚にウィリアム・ブレイク等の本があり、ユートピア思想が根底にありそうで、建物の内部、その運営の作法にその雰囲気があるようで、それが嬉しい。面白いことに最初、ひらきさんと澤信俊氏が親子だとは知りませんでした。
 このヴィレッジも、狼煙の道の駅も市が主導して地域の共同出資だそうです。地域の元気者とよいリーダーがいたのでしょうね。そういえばセミナーハウスの日置ハウスは、今までのサポーター宿舎の中では出色で、評判が良いそうです。

 ここから一気に岬めぐりです。
 小山真徳の浜辺にある「最涯の漂着神」(三崎地区、粟津の海岸)は破船の舳先と鯨の骨で、女神が海藻の髪を流しているという迫力があり、かつ楽しいものでした。鯨の肋骨や背骨をひとつひとつ木を削っていくという大変な工程が作品に表れていて、嬉しくなりました。たまたまその周りでの演奏に出会ったのですが、海に木霊しながら伝わる鯨の声が聞こえてきて、この作品が地域と海と鯨の叙事詩のように見えてきたのです。

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 同じ三崎地区の民家では岩崎貴宏が座敷を1メートルほどかさ上げして、家の記憶のモノたちを塩の大海原に漂流しているような作品をつくりました。これも一見の価値あるものでした。

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 角文平の作業小屋から海を見る作品は、その開口部に珠洲の特産物や伝説やお祭りをシルエットにしたもので、スッキリした気分になりました。

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 わたしのツアーでは時間があると音楽をかけることがあります。昭和の歌謡曲。石川さゆりの「能登半島」、トワエ・モアの「今はもう秋」、山本コータロー「岬めぐり」などです。港、三崎、秋風、海、島などは歌謡曲のキーワードです。それは一言で言えば旅なのです。岬や鼻や洲に辿りつき、内地に入って行った私たちの祖先を想うからでしょうか。芸術祭の大切な基本は、「旅」をそのうちにもっているからではないか、とすら思うのです。

文:総合ディレクター北川フラム
写真:中乃波木 (一部スタッフ撮影)

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