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ディレクター便り vol.21

文:北川フラム(総合ディレクター)
2023年10月11日更新

9月23日から開幕した『奥能登国際芸術祭2023』。14の国と地域から集まったアーティストたちが、珠洲にインスピレーションを受けた作品を展開しています。ディレクター便り第二幕では、今年展開されている作品について、北川フラム総合ディレクターがあれこれ綴ります。

10月8日、ツアーのガイドです。まず、旧飯塚保育所を改修したスズズカの芝生広場でひびのこづえさんの「Come and Go」のダンス公演です。いつもながらの気持ちのよいもので、これを体験すると頭の中のがスウーッとする。全国からオーディションで選ばれ練習した15人が、イカ・タコ・クラゲ・イソギンチャク・・・など海中の生きものを想像させる衣裳をまとってそれらの動きをする。連なり、上下し、くねり、組み、寝転がり・・・。これらが?室内で人が身につけないで吊るされ、飾ってあるのも素晴らしいけれど、服は人が着て動くと、とても素晴らしいです。人が美しくなる。応募者が多いのも頷けます。

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ひびのこづえ×島地保武×小野龍一×スズ「Come and Go」

次にポノマリョフ、弓指寛治の1時間すこしの木ノ浦遊歩道。今日は今までで一番ポノマリョフのエオリアンハープが鳴っていました。海を超えて空気が繋がっている感じ。木ノ浦ビレッジから2基見えるところがあるので見過ごさないでください。弓指さんのは前回説明したせいでもないでしょうが、大人気で多くの人が歩いていました。

食事は古民家レストラン典座(テンゾ)で、いつもながらの丁寧な珠洲の食でおいしい。特に3色クズキリのゴマダレ掛けは初見えでよかった。のどぐろのおかしら付きには皆ニコニコです。前回の芸術祭で行った「大蔵ざらえ」で空いた典座の蔵がギャラリーになっていました。

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劇団三毛猫座+熊田悠夢「海のまぼろし」

食後は、鉢ヶ崎海岸で劇団三毛猫座+熊田悠夢のパフォーマンス「海のまぼろし」。遠くに立山連峰を海ごしにみて、その蜃気楼のお話で夢かうつつでうっとりした1時間。漁船が2艘出たり、沖に翼を広げたサーファーがいたりで、これも芝居の一場面かとも思ったり。そのまま歩いて台湾のラグジュアリー・ロジコの「家のささやき」を見て、第一回目からある能登線旧蛸島駅に続くトビアス・レーベルガーの「Something Else is Possible/なにか他にできる」に寄りましたが、廃線跡に残っていたボロボロの列車が化粧直しをしていたのでビックリ。多くのツアー客にお会いしました。

そのあとはスズ・シアター・ミュージアムで、好天のもと気持ちのよい一日です。

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ひびのこづえ×島地保武×川瀬浩介「FLY,FLY,FLY」

夕方は、私は午前中に行ったスズズカで、島地保武さんのソロダンス鑑賞。島地さんは世界でも珍しい美しい身体の方で、天井からぶら下がっているひびのさんのカンディンスキーの絵に出てくるようなさまざまな海中生物をひとつずつ下ろしてそれらと話しながら、身にまとい、脱ぎ、踊り転がっていて、あたかもそれらの生き物と話しをしているようで、私たちにとってたとえようもない楽しい時間を与えてくれました。 15日にも楽しい趣向で、私がガイドのツアーを行います。乞うご期待! 

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ラグジュアリー・ロジコ「家のささやき」  

ラグジュアリー・ロジコの作品は奇跡的に成立です。彼らの元々の提案はドーム型の作品です。5月5日の震災後、詳しく検討したら資材の値上がりと、すべての部材がカーブで出来ているので、それをやる業者さんが今はつかまらない、手間コストがかなりかかるということで実現困難ということになりました。しかし彼らは諦めない。オープン初日にお会いした3人が議論・検討してくれたのでしょう。現在見る、Rなしの三角屋根の、美しい、もともとあった瓦が風に動き、鳴るという感動的な提案を日本の業者さんとも相談して出してきてくれたのです。台湾での芸術祭への期待と、今までのつながりが後押ししてくれたのでしょう。彼らは早めに来て開幕初日までかかって実現してくれたのです。感謝!

10月15日のディレクターツアーはまだ空きがございます。詳細は下記をご確認ください。
https://www.oku-noto.jp/ja/news_2023_047.html

地震に負けない珠洲、元気なスズに!
豊穣の里山、里海にアートと食 14の国・地域からアーティストが集結  


北川フラム